
セキュリティ重視社会の暗部
犯罪とセキュリティをめぐる言説が、異質なもの、リスク、暴力の排除を主導し、ひいては厳罰主義社会を招来しているという、日本の現状が明らかにされている。
セキュリティの向上自体は結構なことである。しかし問題なのは、セキュリティが自己目的化して、人間の生の多様性と自由が犠牲にされかねない健全とはいえない現状があるからである。また大半の人が、そうした現状を仕方がないと受け入れているからである。
本書によれば、セキュリティが過度に重視される状況は、日本が危険な社会になったからではなく、メディア報道や法運用によって導かれた側面が強い。犯罪や暴力に巻き込まれる可能性が高くなったわけでもないのに、なぜかセキュリティの確保と厳罰化が声高に叫ばれているのが、いまの日本である。
最近、社会が何か変だと感じている人にも、そうでない人にも読んでいただきたい本である。
PR